経営管理

【税理士が解説】上場企業で発生する多額の横領事件。横領の手口と中小企業での対策は?

昨年末にソニー生命で約170億円の横領の報道がありました。近年では、このほかにも「日本マクドナルド(約7億円)」や「ジャパンディスプレイ(約5.7億円)」、「ローソン(約4.3億円)」などの内部統制(企業不祥事を防ぎ、業務の適正を確保するための社内体制)が法律上義務付けられている上場会社においても、億単位の横領で発覚しており決して珍しいものではありません。
内部統制が十分ではない中小企業では、業務上横領は当然に発生する可能性があるということを認識しておく必要があります。

本年 5 月、海外連結子会社である SA Reinsurance Ltd.において、同社名義の銀行口座から同社が承認していない約 170 億円(約 155 百万米ドル)の送金が行われ、その後、弊社社員が本年 11 月 29日付で詐欺罪の容疑で警視庁に逮捕されておりましたが、本日、同社員が、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反(犯罪収益等隠匿罪)の容疑で追送致されました。

出典:ソニー生命プレスリリース

業務上横領の手口と内部統制

業務上横領の手口としては、次のような方法が考えられます。
業務上横領というと経理部署で発生するとイメージされる方も多いと思われますが、経理周り以外にも色々な横領の手口がありますので、経理部署に限らず発生する可能性があります。
また、第三者と共謀しているケースでは、会社単独で把握することが難しく、税務調査などで発覚することも珍しくありません。

1.現預金の不正支出等(架空の人件費や経費、領収書偽造)

例えば、架空の請求書の発行により従業員の親族名義の口座やペーパーカンパニーなどへ振り込ませる手口や領収証の金額の改ざんや事業に関係ない経費計上の手口により、不正に現預金を流出させます。
この不正の多くは、単純な着服と異なり、請求書や領収証などの証憑等に基づいて出金処理が行われていることから、通帳残高と帳簿残高は一致するなど、外部証拠からこの手口を発見することは難しい場合があります。

2.商品在庫の横流し、不正転売等

例えば、商品在庫の横流しや、事業に必要のない備品を購入して転売する手口です。
在庫管理が不十分である場合(在庫表が偽装される場合)や備品等の管理簿がない場合には、この手口を発見することができません。

3.リベートやキックバックの不正受領等

商品を安価な価額で販売して個人でリベートを受領する手口や、通常よりも高い金額で仕入や契約を行いその一部をキックバックさせる手口です。
この不正は、第三者と共謀して行われていますので、会社単独で把握することが難しい場合があります。

法人を組織化していく上では、他人に任せることが必要がありますが、すべてを他人に任せる場合には、業務上横領を完全に防ぐことができないと考えています。
ただし、不正が起こらない(起こりにくい)仕組みや、不正が起きたとしても被害が拡大しない(早期に発見できる)仕組み作り(内部統制)を導入することはできますので、法人を組織化していく上では、内部統制の導入も必要であると考えます。

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