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【税理士が解説】実務で見落としがちな論点。機械及び装置と中古資産の耐用年数の関係について

令和3年3月30日東京地裁(民事51部)において、設備の一部を構成する中古資産に簡便法の適用認めず納税者敗訴する事例(令和3年11月24日東京高裁第22民事部も同じ)がありました。
機械装置の中古の耐用年数は、実務で見落としがな論点ですので、本投稿で解説します。

中古資産の耐用年数

耐用年数は、所得税や法人税に定めがなく「減価償却資産の耐用年数等に関する省令(耐用年数省令)」に規定されています。
この耐用年数省令第3条(中古資産の耐用年数等)では、中古資産を取得して事業の用に供した場合には、その資産の耐用年数は、法定耐用年数ではなく、次の耐用年数とすることができる旨が定められています[*1]。
ただし、その中古資産を事業の用に供するために支出した資本的支出の金額がその中古資産の再取得価額(中古資産と同じ新品のものを取得する場合のその取得価額をいいます。)の50%に相当する金額を超える場合には、耐用年数の見積りをすることはできず、法定耐用年数を適用することになります。
一般的に使用可能期間の見積りが困難であるため、実務上は、簡便法で算定することが多いと思われます。

1.中古資産をその事業の用に供した時以後の使用可能期間の年数として合理的に見積もられる年数
2.上記の使用可能期間の見積りが困難である場合(簡便法)
[*2]
 ①.法定耐用年数の全部を経過した資産・・・その法定耐用年数の20%に相当する年数[*3]
 ②.法定耐用年数の一部を経過した資産・・・その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20%に相当する年数を加えた年数[*3]

[*1] 事業の用に供した年度で選択する必要があります(事業供用後の年度で変更することはできません。)。
[*2] 簡便法は、別表第一、別表第二、別表第五又は別表第六に掲げる減価償却資に限定されています。ソフトウェアは通常別表第三に該当するため、簡便法の適用はありません。
[*3] 1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨て、その年数が2年に満たない場合には2年となります。

機械装置の償却単位

機械装置及び構築物については、それらを構成する個々の資産の個別年数により償却をするのではなく,その個々の資産の全部を総合した耐用年数により償却を行うこととされています(総合償却資産)。
総合償却資産は、当該資産に属する個々の資産の全部につき、その償却の基礎となる価額を個々の資産の全部を総合して定められた耐用年数により償却することとされますので、例えば、工場のライン一部を構成する機械装置を中古で取得した場合には、中古の機械装置の取得のウエイトが少ないため、中古の耐用年数は認められません
ただし、工場等を一括して取得する等、その設備に属する資産の相当部分[*1]の中古資産を一時に取得した場合に限り中古の耐用年数が認められます[*2]。
したがって、機械装置の中古の耐用年数は無条件に認められるものではないことに留意する必要があります。

[*1] 相当部分は、取得した中古資産の再取得価額の合計額が,その中古資産を含めた設備全体の再取得価額の3割以上である場合が該当します(耐用年数通達1-5-9)。
[*2] 中古の総合償却資産を取得した場合の総合耐用年数の見積りは、耐用年数通達1-5-8の他、耐用年数通達1-5-10において見積りの特例があります
【国税庁:耐用年数通達 第5節中古資産の耐用年数】
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sonota/700525/01/01_05.htm

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