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【税理士が解説】悩ましい税法上の繰延資産。支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものとは?

実務を行う上で悩ましい論点の一つに「税法上の繰延資産」があります。
税法上の繰延資産に該当した場合には、一時の費用として認められませんので、税額計算をするにあたり留意する必要があります。
本投稿では、法人税法上の繰延資産について解説します。

税法上の繰延資産とは?

法人税法上の繰延資産は「法人が支出する費用のうち支出の効果がその支出の日以後一年以上に及ぶものでで政令で定めるものをいう」と定義され(法法2条①二十四)、同政令では、会社法の繰延資産以外に、次に掲げる費用で支出の効果がその支出の日以後一年以上に及ぶものを繰延資産と定めています。

  1. 自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用
  2. 資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用
  3. 役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
  4. 製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
  5. 上記に掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用

法人が支出する費用の多くは、自己が便益を受けるために支出する費用ですので、このうち支出の効果がその支出の日以後一年以上に及ぶものは、すべてが繰延資産に該当してしまいます。
この「支出の効果がその支出の日以後一年以上に及ぶもの」については、どのように考えればよいでしょうか。

【国税庁:法人税法基本通達50-3 繰延資産の償却費の計算】
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/08/14.htm

支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもの

この支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものについては、「LBOを目的とする資金の借入れを行うために金融機関に支出したアレンジメント・フィーの効果が支出の日以後1年以上に及ぶものか争われた裁決(令和3年4月27日)」が参考になります。

同裁決で審判所は、「支出の効果」とは費用収益対応の原則における「収益の発生」を意味し、「支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもの」というのは、費用収益対応の原則の下、費用の支出が1年以上に及び継続的な収益を発生させる性質を有するものと解するのが相当であると判示しています。

したがって、支出の効果の期間のみならず、その支出に対応する収益の計上が具体的に見込まれるか否かをもって、税法上の繰延資産への該当の有無を判断することになります。すべての場合に該当するわけではありませんが、実務を処理する上で参考となれば幸いです。

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