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【税理士が解説】業務用厨房機器の法定耐用年数(減価償却費)は?飲食店に関わる耐用年数について解説します。

飲食店を開業される方から事業計画についてのご相談を頂きました。
飲食店を開業するためには、内装工事や厨房機器などの設備投資を行う必要がありますが、その投資を何年で回収(償却)できるかということは事業計画の策定の上で重要なポイントとなります

(償却資産の耐用年数は、厳密には経済的耐用年数によることが望ましいのですが、実務上は経済的耐用年数=法定耐用年数を用いることが多いと思われます。また、飲食店の場合には、居抜き物件や中古設備、リースなどの選択肢があり、新品がよいということでもありません。)。

本投稿では、飲食店に関わる法定耐用年数(新品)について解説を行います。

飲食店開業時の設備投資は?

飲食店を開業する場合、一般的には次のような設備投資を行う必要があります。

  1. 物件費(敷金・礼金、仲介手数料など)
  2. 店舗内装費(デザイン料、サイン工事、照明、造作、給排水・電気・ガス工事費など)
  3. 厨房設備(ガステーブル、オーブンレンジ、コールドテーブル、冷凍冷蔵庫、製氷機、食器洗浄機など)
  4. 什器備品(食器類、ユニフォーム、その他消耗品など)
  5. その他諸費(広告費、人材採用費)

上記のうち、2~4が設備への投資となりますので一定額以上のものは減価償却資産として処理する必要があります。

【国税庁タックスアンサー:No.2100 減価償却のあらまし】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm

飲食店に関わる耐用年数は?

店舗内装費の耐用年数

内装工事(内部造作)の耐用年数は、自社物件か賃貸建物であるかによって取り扱いが異なります。
自社物件の場合、その造作が建物附属設備に該当する場合を除いて、その建物本体の耐用年数により償却することとされています。

他方で賃貸物件の場合、建物本体を所有しているわけではありませんので、建物の耐用年数を使用することができず、当該建物の耐用年数、その造作の種類、用途、使用材質等を勘案して、合理的に見積った耐用年数(見積耐用年数※)によることとされています。

一般的な工事明細の工事区分と法定耐用年数の関係をまとめると次の通り判断することができます。(一例ですので、必ずしも当該工事区分と法定耐用年数が合致するものではありません。)。

工事区分勘定科目法定耐用年数
 仮設工事一式   建物見積耐用年数
 造作工事一式建物見積耐用年数
 塗装工事一式建物見積耐用年数
 内装工事一式建物見積耐用年数
 看板工事(突出看板)一式建物附属設備18年
 電気(照明)工事一式建物附属設備15年
 給排水工事一式建物附属設備15年
 衛生設備工事一式建物附属設備15年
 設計デザイン料建物と建物附属設備に配賦N/A
 諸経費建物と建物附属設備に配賦N/A

※見積耐用年数は、造作を構成する種類や材質ごとに、その個別の耐用年数を判断し、個別耐用年数の償却額と造作の取得価額を加重平均して造作全体の耐用年数を見積る方法です。

例えば、木造の造作であれば20年(建物/木造・合成樹脂造のもの/飲食店用のもの)、

作り付けの家具は5年(器具及び備品/家具、電気機器、ガス機器、家庭用品(他に揚げてあるものを除く。)/その他の家具/接客業用のもの)、

タイル工事は3年(器具及び備品/家具、電気機器、ガス機器、家庭用品(他に揚げてあるものを除く。)/じゅうたんその他の床用敷物/小売業用・接客業用・放送用・レコード吹込用・劇場用のもの)を個別耐用年数として考えることができますので、これらを加重平均すると飲食店の店舗内装費の耐用年数は、15年~20年程度となることが多くあります。


また、建物について賃借期間の定めがあるもの(賃借期間の更新のできないものに限る。)で、かつ、有益費の請求又は買取請求をすることができないものについては、当該賃借期間を耐用年数として償却することができるとされています。

店舗用簡易装備

建物附属設備には店舗用簡易装備の耐用年数(3年)が掲記されています。この店舗用簡易装備ですが、

  1. 装飾を兼ねた造作(例えば、ルーバー、壁板等)
  2. 陳列だな(器具及び備品に該当するものを除く。)
  3. カウンター(比較的容易に取替えのできるものに限り、単に床の上においたものを除く。)

等で3年以内に取替えが見込まれるものについて採用することができます。

B工事(工事負担金)の耐用年数

オフィスや商業施設のテナントとして入居する場合、共用部などの工事はオーナー指定の業者に発注して行います。この工事は一般にB工事と呼ばれるもので、オーナーに所有権があるもののテナントが工事費用負担します(この他にオーナーが発注し、オーナーが費用負担行うA工事、テナントが発注し、テナントが費用負担するC工事があります。)。
このB工事ですが、通常は、テナントが費用負担していることから、上記の店舗内装費に準じて処理することが多いと思われますが、工事負担金で内訳が不明な場合もあり、繰延資産(令第十四条第一項第六号ロ《資産を賃借するための権利金等》に掲げる費用/建物を賃借するために支出する権利金等(8-1-5(1))/(3) (1)及び(2)以外の権利金等の場合/5年(契約による賃借期間が5年未満である場合において、契約の更新に際して再び権利金等の支払を要することが明らかであるときは、その賃借期間))として処理することもあります。

厨房設備の耐用年数

厨房設備は機械及び装置の飲食店用設備に該当しますので、8年が法定耐用年数となります。

なお、器具及び備品の耐用年数(家具、電気機器、ガス機器、家庭用品(他に揚げてあるものを除く。)/電気冷蔵庫、電気洗濯機その他これらに類する電気・ガス機器)を使用している例が多く見受けられますが、機械装置については当該資産の用途、機能、実際の設置使用状況等について判断しますので、これらの耐用年数を使用することができません。

加えて、機械及び装置と器具及び備品では、租税特別措置法における優遇措置(特別償却や税額控除)の取扱いが異なりますので、器具及び備品ではこれらの優遇措置の適用ができないことになります。
また、機械及び装置は総合償却資産となりますので、総合耐用年数の見積もりとなる点に留意する必要があります。

什器備品の耐用年数

例えば食事・ちゅう房用品は、器具及び備品に耐用年数(陶磁器製・ガラス製のもの2年/その他のもの5年)が定めれていますが、これらの用品は、通常1単位が10万円未満のものですので少額の減価償却資産として損金算入又は必要経費となり、減価償却資産となることは多くありません。
また、ユニフォーム等も使用可能期間が1年未満(かつ10万円未満)ですので、消耗品として損金算入又は必要経費となります。

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