税務情報

【税理士が解説】法人保険の税務について。保険契約毎の税務上の取り扱いについて解説します。

令和4年7月14日に金融庁がマニュライフ生命保険株式会社に対する行政処分(業務改善命令)を発出しました。

【参考:マニュライフ生命保険株式会社に対する行政処分について】
https://www.fsa.go.jp/news/r4/hoken/20220714-1/20220714-1.html

これは、同社が保険本来の趣旨を逸脱するような商品開発及び募集活動(いわゆる過度の節税保険)、営業優先の企業文化やコンプライアンス、リスク管理を軽視する企業風土を問題視されためです。
また、同日に「節税(租税回避)を主たる目的として販売される保険商品への対応における国税庁との更なる連携強化」が公表され、、「必要に応じて、金融庁からも国税庁に事前照会を実施」や「保険会社・保険代理店における募集管理態勢の整備状況や販売実態等のモニタリング等」の仕組みが導入されるようです。
このように法人保険は節税保険を目的としたものも多く、過去においても節税保険に対応する通達改正が繰り返されています。そこで本投稿では、法人保険の税務について、保険契約毎に税務上の取り扱いについて解説したいと思います。

養老保険に係る保険料(法通9-3-4)

養老保険とは、被保険者が保険期間中に死亡した場合には死亡保険金が支払われ、満期まで生存していた場合には満期保険金が支払われる保険を言います。
養老保険の取り扱いについては、法人税法基本通達(以下、「法通」)9-3-4に定められており、保険金の受取人によって取り扱いが異なります。

(養老保険に係る保険料)
法通9-3-4 法人が、自己を契約者とし、役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする養老保険(被保険者の死亡又は生存を保険事故とする生命保険をいい、特約が付されているものを含むが、9-3-6に定める定期付養老保険等を含まない。以下9-3-7の2までにおいて同じ。)に加入してその保険料(令第135条《確定給付企業年金等の掛金等の損金算入》の規定の適用があるものを除く。以下9-3-4において同じ。)を支払った場合には、その支払った保険料の額(特約に係る保険料の額を除く。)については、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次により取り扱うものとする。(昭55年直法2-15「十三」により追加、昭59年直法2-3「五」、平15年課法2-7「二十四」、令元年課法2-13により改正)

(1) 死亡保険金(被保険者が死亡した場合に支払われる保険金をいう。以下9-3-4において同じ。)及び生存保険金(被保険者が保険期間の満了の日その他一定の時期に生存している場合に支払われる保険金をいう。以下9-3-4において同じ。)の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額は、保険事故の発生又は保険契約の解除若しくは失効により当該保険契約が終了する時までは資産に計上するものとする。

(2) 死亡保険金及び生存保険金の受取人が被保険者又はその遺族である場合 その支払った保険料の額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。

(3) 死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で、生存保険金の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額のうち、その2分の1に相当する金額は(1)により資産に計上し、残額は期間の経過に応じて損金の額に算入する。ただし、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には、当該残額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。

定期保険及び第三分野保険に係る保険料(法通9-3-5)

定期保険とは、被保険者が一定の保険期間中に死亡した場合に死亡保険金が支払われる保険(満期保険金はありません。)を言い、第三分野保険とは、生命保険(第一分野)と損害保険(第二分野)の中間に位置する保険のことで、医療保険、がん保険、介護保険等の保険を言います。
従前の通達の取り扱いでは、「定期保険」と「第三分野保険」ではそれぞれ異なる取り扱いが定められていましたが、「第三分野保険」を活用した節税保険の組成が横行したため、改正により商品グループに関わらず同一の取り扱いとなっています。
また、通常の定期保険はこの定めの適用を受けますが、多額の解約返戻金が発生する保険である、「長期平準定期保険(保険期間が特に長期(満期が99歳、100歳など)の保険)」や「逓増定期保険(保険険料は変わらずに保険金額が段階的に増えていく保険)」等で最高解約返戻率が50%を超えるものについては、保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれていることから、同9-3-5の2において最高解約返戻率により損金算入が異なるの取り扱いが定められています。
(定期付養老保険等に係る保険料や特約に係る保険料についても法通9-3-6や同9-3-6の2において、上記と同様の整理がされています。)
また、本取扱いは令和1年7月8日契約分(解約返戻金相当額がない短期払の定期保険又は第三分野保険を除き、同保険は同年10月8日以後契約分)から適用され、経過措置により契約日によって取り扱いが異なることに留意する必要があります。

(定期保険及び第三分野保険に係る保険料)
法通9-3-5 法人が、自己を契約者とし、役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする定期保険(一定期間内における被保険者の死亡を保険事故とする生命保険をいい、特約が付されているものを含む。以下9-3-7の2までにおいて同じ。)又は第三分野保険(保険業法第3条第4項第2号《免許》に掲げる保険(これに類するものを含む。)をいい、特約が付されているものを含む。以下9-3-7の2までにおいて同じ。)に加入してその保険料を支払った場合には、その支払った保険料の額(特約に係る保険料の額を除く。以下9-3-5の2までにおいて同じ。)については、9-3-5の2《定期保険等の保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合の取扱い》の適用を受けるものを除き、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次により取り扱うものとする。(昭55年直法2-15「十三」により追加、昭59年直法2-3「五」、令元年課法2-13により改正)

(1) 保険金又は給付金の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額は、原則として、期間の経過に応じて損金の額に算入する。

(2) 保険金又は給付金の受取人が被保険者又はその遺族である場合 その支払った保険料の額は、原則として、期間の経過に応じて損金の額に算入する。ただし、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には、当該保険料の額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。

(注)

1 保険期間が終身である第三分野保険については、保険期間の開始の日から被保険者の年齢が116歳に達する日までを計算上の保険期間とする。

2 (1)及び(2)前段の取扱いについては、法人が、保険期間を通じて解約返戻金相当額のない定期保険又は第三分野保険(ごく少額の払戻金のある契約を含み、保険料の払込期間が保険期間より短いものに限る。以下9-3-5において「解約返戻金相当額のない短期払の定期保険又は第三分野保険」という。)に加入した場合において、当該事業年度に支払った保険料の額(一の被保険者につき2以上の解約返戻金相当額のない短期払の定期保険又は第三分野保険に加入している場合にはそれぞれについて支払った保険料の額の合計額)が30万円以下であるものについて、その支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときには、これを認める。

保険契約の転換をした場合(法通9-3-7)

転換とは、現在の契約の積立部分や積立配当金を「転換(下取り)価格」として新たな保険を締結する方法です(転換後は元の契約は消滅します。)。転換は旧契約を解約して新たな契約に加入するものであるため、既払込保険料のうち資産計上している部分について損金算入が認められ、その損金算入額について、保険料を一時払いしたものとして取り扱うことができます(改正前通達の適用前の契約に契約に係る定期保険等を改正通達の適用後に転換した場合には、改正後の取り扱いとなります。)。

(保険契約の転換をした場合)
法通9-3-7 法人がいわゆる契約転換制度によりその加入している養老保険、定期保険、第三分野保険又は定期付養老保険等を他の養老保険、定期保険、第三分野保険又は定期付養老保険等(以下9-3-7において「転換後契約」という。)に転換した場合には、資産に計上している保険料の額(以下9-3-7において「資産計上額」という。)のうち、転換後契約の責任準備金に充当される部分の金額(以下9-3-7において「充当額」という。)を超える部分の金額をその転換をした日の属する事業年度の損金の額に算入することができるものとする。この場合において、資産計上額のうち充当額に相当する部分の金額については、その転換のあった日に保険料の一時払いをしたものとして、転換後契約の内容に応じて9-3-4から9-3-6の2までの例(ただし、9-3-5の2の表の資産計上期間の欄の(注)を除く。)による。(昭55年直法2-15「十三」により追加、令元年課法2-13により改正)

払済保険へ変更した場合(法通9-3-7の2)

払済保険とは、保険料の払い込みを中止して、その時点での解約返戻金をもとに、保険期間をそのままにした保障額の少ない保険に変更する方法です。解約返戻金相当額が保障額の少ない保険の保険料に充当されるため、資産計上の保険料が損金に算入される洗替処理となります(改正前通達の適用前の契約に契約に係る定期保険等を改正通達の適用後に払済とした場合には、改正後の取り扱いとなります。)。
なお、同種の保険(特約が付加されていないものに限る。)に変更する場合には、契約が終了するまで資産に計上することが認められています。

(払済保険へ変更した場合)
法通9-3-7の2 法人が既に加入している生命保険をいわゆる払済保険に変更した場合には、原則として、その変更時における解約返戻金相当額とその保険契約により資産に計上している保険料の額(以下9-3-7の2において「資産計上額」という。)との差額を、その変更した日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入する。ただし、既に加入している生命保険の保険料の全額(特約に係る保険料の額を除く。)が役員又は使用人に対する給与となる場合は、この限りでない。(平14年課法2-1「二十一」により追加、令元年課法2-13により改正)

(注)

1 養老保険、終身保険、定期保険、第三分野保険及び年金保険(特約が付加されていないものに限る。)から同種類の払済保険に変更した場合に、本文の取扱いを適用せずに、既往の資産計上額を保険事故の発生又は解約失効等により契約が終了するまで計上しているときは、これを認める。

2 本文の解約返戻金相当額については、その払済保険へ変更した時点において当該変更後の保険と同一内容の保険に加入して保険期間の全部の保険料を一時払いしたものとして、9-3-4から9-3-6までの例(ただし、9-3-5の2の表の資産計上期間の欄の(注)を除く。)により処理するものとする。

3 払済保険が復旧された場合には、払済保険に変更した時点で益金の額又は損金の額に算入した金額を復旧した日の属する事業年度の損金の額又は益金の額に、また、払済保険に変更した後に損金の額に算入した金額は復旧した日の属する事業年度の益金の額に算入する。

契約者配当

契約者配当とは、予定利率を上回る運用益をあげた場合等に、 保険契約者に支払われる配当金であり、原則として通知を受けた日の属する事業年度の収益となりますが、保険料の全部を資産計上(保険積立金)している場合には、保険料が費用とにならないことと平仄を合わせるために保険積立金か控除する方法も認められています。

(契約者配当)
法通9-3-8 法人が生命保険契約(適格退職年金契約に係るものを含む。)に基づいて支払を受ける契約者配当の額については、その通知(据置配当については、その積立てをした旨の通知)を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが、当該生命保険契約が9-3-4の(1)に定める場合に該当する場合(9-3-6の(2)により9-3-4の(1)の例による場合を含む。)には、当該契約者配当の額を資産に計上している保険料の額から控除することができるものとする。(昭55年直法2-15「十三」により改正)

(注)

1 契約者配当の額をもっていわゆる増加保険に係る保険料の額に充当することになっている場合には、その保険料の額については、9-3-4から9-3-6までに定めるところによる。

2 据置配当又は未収の契約者配当の額に付される利子の額については、その通知のあった日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるから留意する。

本記事は、作成日時点の法令等に基づき、情報提供等を目的として当事務所の見解等を掲載したものです。
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