税務情報

【税理士が解説】法人から個人への名義変更(名義変更プラン)の改正後の評価額について

前回の投稿で法人保険の税務(【税務情報】法人保険の税務について。保険契約毎の税務上の取り扱いについて解説します。)について解説を行いましたが、直近では法人から個人(役員や従業員)への名義変更時の評価額についても改正が行われています。
これは、「名義変更プラン」と呼ばれるもので、法人で低解約返戻金型逓増定期保険(加入から一定期間の解約返戻金を低くして保険料を抑えた逓増定期保険)や「復旧することができる払済保険」に加入して数年間保険料を負担し、個人名義に変更する手法です。
この場合、法人から個人へ名義変更する際の評価は、所得税法基本通達(以下、「所通」)36-37(保険契約等に関する権利の評価)において、解約返戻金により評価することとされていました。
このため、個人に対して低解約返戻金により譲渡することが可能であり、個人の解約返戻金の所得区分は一時所得となり、50万円の特別控除と1/2課税が認められているため、個人の税負担を抑えることが税務対策が可能となっていました。

(保険契約等に関する権利の評価)
旧所通36-37 使用者が役員又は使用人に対して支給する生命保険契約若しくは損害保険契約又はこれらに類する共済契約に関する権利については、その支給時において当該契約を解除したとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額(解約返戻金のほかに支払われることとなる前納保険料の金額、剰余金の分配額等がある場合には、これらの金額との合計額)により評価する。

改正後の取り扱いは?

上記のような問題があったため、令和3年7月1日より所通36-37が改正されています。
改正後は、解約返戻金による評価を原則としつつも「支給時解約返戻金の額が支給時資産計上額の 70%に相当する金額未満である保険契約等に関する権利」と 「復旧することのできる払済保険その他これに類する保険契約等に関する権利」については、法人の資産計上額(復旧できる払済保険については+法人税基本通達9-3-7の2の取扱いにより使用者が損金に算入した金額を加算した金額)により評価することとされました。
したがって改正後は、個人での利益(一時所得)はほとんど発生しないことになると考えられます。
なお、本通達は、法人税法基本通達9-3-5の2が適用される契約について対象となることから、令和1年7月8日前の契約は対象外となり、令和1年7月8日以後の契約で令和3年7月1日以後に名義変更した契約について適用されます。

(保険契約等に関する権利の評価)
36-37 使用者が役員又は使用人に対して生命保険契約若しくは損害保険契約又はこれらに類する共済契約(以下「保険契約等」という。)に関する権利を支給した場合には、その支給時において当該保険契約等を解除したとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額(解約返戻金のほかに支払われることとなる前納保険料の金額、剰余金の分配額等がある場合には、これらの金額との合計額。以下「支給時解約返戻金の額」という。)により評価する。
ただし、次の保険契約等に関する権利を支給した場合には、それぞれ次のとおり評価する。
⑴ 支給時解約返戻金の額が支給時資産計上額の 70%に相当する金額未満である保険契約等に関する権利(法人税基本通達9-3-5の2の取扱いの適用を受けるものに限る。)を支給した場合には、当該支給時資産計上額により評価する。
⑵ 復旧することのできる払済保険その他これに類する保険契約等に関する権利(元の契約が法人税基本通達9-3-5の2の取扱いの適用を受けるものに限る。)を支給した場合には、支給時資産計上額に法人税基本通達9-3-7の2の取扱いにより使用者が損金に算入した金額を加算した金額により評価する。
(注)「支給時資産計上額」とは、使用者が支払った保険料の額のうち当該保険契約等に関する権利の支給時の直前において前払部分の保険料として法人税基本通達の取扱いにより資産に計上すべき金額をいい、預け金等で処理した前納保険料の金額、未収の剰余金の分配額等がある場合には、これらの金額を加算した金額をいう。

附 則
(経過的取扱い)

この法令解釈通達による改正後の所得税基本通達は、令和3年7月1日以後に行う保険契約等に関する権利の支給について適用し、同日前に行った保険契約等に関する権利の支給については、なお従前の例による。

保険契約等に関する権利の評価に関する所得税基本通達の解説
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/210621/pdf/02.pdf
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