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【税理士が解説】有利なお金の取り出し方(マイクロ法人と節税対策の続編)

本投稿は、「マイクロ法人と節税対策」の続きで、有利なお金の取り出し方について解説します。

税務対策の考え方

マイクロ法人で、「生活に必要のないお金(所得)を税率の高い個人ではなく、税率の低い法人に貯金しておき、個人と法人のトータルの税負担を減らす対策」と解説しましたが、事例にすると次のようなイメージです(数字は一例です。)。

1.対策前

(個人)  ①.所 得:2,000万円(所得税~40%+住民税10%)  ②.税金等:800万円(所得税、住民税、社会保険等の合計)  ③.手取り:1,200万円(=①-②)  ④.生活費:600万円※ ⑤.貯 金:600万円※生活に必要ない所得  ※1,200万円すべて生活費の方は貯金がありませんので、税務対策はできません。

2.対策後

(個人)  ①.所 得:900万円(所得税~23%+住民税10%)  ②.税金等:300万円(所得税、住民税、社会保険等の合計)  ③.手取り:600万円(=①-②)  ④.生活費:600万円  ⑤.貯 金:0万円 (法人)  ⑥.所 得:1,100万円(=2,000万円-900万円)  ⑦.法人税:330万円(法人税30%)  ⑧.貯 金:770万円(=⑥-⑦)

対策により貯金が170万円(=770万円-600万円)増えましたが、個人の貯金を法人に移したためです(節税額)。法人から貯金を取り出すときに税金が課税されますので、取出し時の税率ごとに比較すると次の通りです。

(1).15%の税率で取り出す場合 654万円(=770万円*(1-15%))。 対策前と比べて54万円(=654万円-600万円)で有利となります。

(2).30%の税率で取り出す場合 539万円(=770万円*(1-30%)) 対策前と比べて△61万円(=539万円-600万円)で不利となります。

上記の試算は、一例ですのが、所得や生活費等により対策効果が異なります(年間の試算額ですので長期間であるほど貯金額は増えます。)。

マイクロ法人の税務対策は、取り出し方が重要であることがご理解いただけたと思います。

有利な取り出し方は?

有利な取り出し方の一例は以下の通りで、キャッシュアウト型や非課税・減税型の対策が有効です(税金対策で知っておきたい4類型の投稿もご覧ください。)。実際には複数の方法を組み合わせた形で対策します。

1.退職所得課税の活用

退職所得は永年勤続に対する功労金であることから、退職所得控除や1/2課税(分離)となり課税関係が優遇されます。 この優遇措置の活用により法人から退職金として払い出すことにより、法人から有利にお金を取り出すことが可能です。 なお、法人税法上は、過大な役員退職金は費用として認められない制度ありますが、費用と認められない場合でも、所得税では退職所得としての課税されます。

2.配当控除の活用

配当金は、法人で課税されたあとの利益を原資とするため、所得税では二重課税を排除する配当控除が適用されます。 この配当控除は、剰余金の配当について、配当所得の10%(課税総所得金額等が1,000万円を超える場合、その超える部分の金額は5%)が所得税額から控除される制度(控除割合が異なりますが、住民税においても同様の趣旨の規定があります。)であり、配当として取り出す場合でも、法人から有利にお金を取り出すことが可能です。

3.給与所得控除の活用

給与所得には、給与所得控除として最低55万円の控除が認められます(個人事業主は、青色申告特別控除として65万円[電子申告の場合]がありますが、重複して控除することが可能です。)。 役員報酬として年間55万円までは課税されませんので、法人から有利にお金を取り出すことが可能です。

4.所得分散

マイクロ法人の業務に従事するご親族への給与を支払うことで、ご家族全体で法人から有利にお金を取り出すことが可能です。 この場合、給与を受領する親族の方も 3.給与所得控除を活用できます(既にご親族に給与がある場合には、重複して控除されません。)。 なお、親族への給与は、法人への勤務実態が伴わない場合には法人の費用や親族に対する給与として認められません。 税法には、親族に対する給与等のうち不相当に高額な部分の金額は、費用として認められない規定(役員給与の損金不算入、過大な使用人給与の損金不算入)がありますので、税務調査においてもその実態が確認されます。

5.相続後の死亡退職金や自己株式の取得

マイクロ法人に貯金した場合、相続時の株式の評価額が低くなるメリットがあります。 例えば、前述の対策前の貯金は600万円ですが、この場合600万円が評価となり、変わりありません。 他方で対策後の法人の貯金は770万円ですが、マイクロ法人の株式として保有しているため、この金額からディスカウントされた金額が評価額となります(ケースにもよりますが十数パーセントから数十パーセント減)。このため、法人に貯金しておくことは相続対策に繋がります。 加えて、相続後にマイクロ法人から死亡退職金として支給した場合やマイクロ法人が株式を買取った場合には、法人から有利にお金を取り出すことが可能です。

【国税庁:No.1477 相続により取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の課税の特例】 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1477.htm

税金対策の最新事例については、こちらを参照ください。

本記事は、作成日時点の法令等に基づき、情報提供等を目的として当事務所の見解等を掲載したものです。
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