相続税事例

親族間の生前贈与、名義財産などがある場合

国税庁が公表する「相続税の申告実績の概要」によれば、相続財産で最も高い割合を占めるのは「不動産」です。同じく国税庁が公表する「相続税の調査等の状況」によれば、申告漏れ財産は「現金・預貯金等」が高い割合を占めており、実際の税務調査の現場においても被相続人以外の名義である預貯金等(以下「名義財産」)について争点となることが多くあります。
税務調査での争いを避けるためにも申告前に事実関係を整理しておき、名義財産に該当しない旨を書面添付に記載しておくことが有効であると考えます。

名義財産の判断のポイントは以下の通りです。
贈与の成立

法的に贈与が成立している場合、名義財産には該当しません(贈与税の申告がなくとも贈与は有効です。)。
贈与契約は双方の意思が合致することによって成立する契約ですので、贈与者(あげた人)が一方的に「あげた」だけでは成立せず、受贈者(もらう人)が「もらった」」と意思表示し、自由に管理処分できる時点で贈与が成立します。
よくある事例としては被相続人が子又は孫が知らないうちに子又は孫名義の通帳に入金している場合です。多く場合、受贈者が自由に管理処分できない入金のみが繰り返される逆L口座(預金通帳は右側欄が入金、左側が出金欄であるため)となることが多いのが特徴です。

通帳の届出印や保管場所

相続税の税務調査では印鑑の印影を取ることが行われます。始めに朱肉をつけずにカラ押しその後に朱肉をつけて印影を採取します。カラ押しは印鑑の使用状況を確認(カラ押しにより印鑑に朱肉の形跡があれば日常的に使用されている印鑑と推定)であり、通帳の届出印と照合することで通帳の作成者を推定します。
また、通帳やキャッシュカードの保管場所も重要です。例えば遠方にお子様が住まいで、近所のATMから入金されている場合、通帳やキャッシュカードを被相続人が管理していたと推測できます。

預貯金の原資

専業主婦である配偶者名義の口座に多額の預貯金がある場合、名義財産の争点となりやすい口座のひとつです。
例えば多額の預貯金が自身の親から相続した財産である場合や配偶者個人の年金等が原資である場合には問題となりませんが、いわゆる「へそくり」や医療費等の支払に引き出され、相続時点まで費消されていない部分は、相続財産として申告する必要があります(配偶者名義の預貯金がすべて名義財産に該当するわけではありませんので、過去5年から10年程度の預貯金を精査し、相続財産として申告すべき金額を算定します。)。


高低差や騒音などの特殊要因、旗竿地や水路など特殊形状である場合

土地の評価方法には「路線価方式」と「倍率方式」があり、「路線価方式」は路線価が定められている地域での評価方式です。この路線価は、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額であるため、旗竿地や水路などがある土地は、その土地の形状等に応じた各種補正率により路線価を補正し相続税評価額を算定します(補正には「建築基準法」や「都市計画法」などの知識や経験が必要となるため、評価者によって評価額が上下する可能性があります。)。
また、高低差や騒音などの特殊要因は、路線価に反映されていないことも多いため、現地調査等を行い、他の路線価との価格差など減価要因を把握したうえで評価を行います。

路線価方式では下記の資料を入手して評価を行います。
  • 固定資産税納税通知書・名寄帳
  • 登記事項証明書(土地・建物)
  • 14条地図または公図(地図に準ずる書面)
  • 地積測量図・建物図面
  • 都市計画図
  • 建築計画概要書
  • 道路台帳
  • その他(住宅地図、ハザードマップなど)


市街地山林や市街化調整区内の雑種地である場合

市街地山林は、宅地として評価した価額から宅地の転用のための山林の伐採や抜根費用、地ならしのための整地費用など造成費用を控除して評価します。山林は、がけ地や傾斜地であることも珍しくないため、山林の状況に応じた評価方法を検討する必要があります。
また、市街地山林が郊外にあり路線価が低い場合や、急な傾斜地であるなどそもそも宅地への転用が見込めない場合には、純山林として評価が認められている事から、不動産鑑定士等の専門家から助言を得ながら評価を行います。


最新情報や税金対策の事例は、お知らせにてご案内しておりますのでご参照ください。