税金対策

【税理士が解説】高級スポーツカーに所得税が課税される?生活用動産と所得税の関係について

例えば、個人事業や法人が所有する自動車を売却して譲渡益が生じた場合、所得税や法人税などの税金が課税されることについて違和感を感じる人は多くないと思いますが、他方で個人がプライベートで所有する自動車を購入した金額で売却した場合はどうでしょうか?
購入した金額で売却したにも関わらず所得税が課税されることについて、違和感を感じる人も多いのではいかと思います。
その理由について、個人がプライベートで所有する高級スポーツカーを例に、税金との関係について解説したいと思います。

生活に通常必要な資産

所得税法では、自己又はその配偶者その他の親族が生活の用に供する家具、じゅう器、衣類等の生活に通常必要な動産(一個または一組の価額が30万円を超える貴金属、書画、骨董等を除く。 )の譲渡益は非課税とされています。他方で当該資産に係る譲渡損はないものとみなされます。
なお、生活に通常必要な資産について生じた災害や盗難、横領(以下、「災害等」といいます。)などによる損失は、雑損控除として所得控除により課税標準から控除されます。

生活に通常必要のない資産

生活に通常必要のない資産は次の通りです。譲渡益には課税関係が生じますが、譲渡損は損益通算することができません。また、災害等による損失はその年とその翌年の譲渡所得の金額から控除することができます。

  1. 競走馬(その規模、収益の状況、その他の事情に照らし事業と認められるもののように供されるものを除く。)そのた射こう的行為のの手段となる動産
  2. 主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する不動産(別荘など)やゴルフ会員権等の資産[*1]
  3. 生活の用に供する動産で譲渡所得について非課税とされる生活用動産の範囲の規定に該当しないもの

[*1] 平成26年度税制改正において、 主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する不動産以外の資産が追加されました。これによって平成 26年4月1日以後は、ゴルフ会員権やリゾート会員権等の譲渡損失は、損益通算することが認められなくなりました。

譲渡所得の課税方法

譲渡所得は、財産の種類によって課税の方法が異なります。不動産や株式以外の資産は総合課税となり、給与など他の所得と合算して15%~55%の累進税率で課税されます。また、所有期間によっても譲渡所得金額が異なり、所有期間が5年を超えているものは長期譲渡所得、所有期間が5年以内は短期譲渡所得となります。
総合課税の譲渡所得の金額は次のように計算し、短期譲渡所得の金額は全額が総合課税の対象になりますが、長期譲渡所得の金額はその2分の1が課税の対象になります。

譲渡所得の金額 = 譲渡価額 - (取得費[*1] + 譲渡費用[*2])-50万円[*3]

[*1] 取得費とは、一般に購入代金のことです。このほか、購入手数料や設備費、改良費なども含まれます。ただし、使用したり、期間が経過することによって減価する資産にあっては、減価償却費相当額を控除した金額となります。
[*2] 譲渡費用とは、売るために直接かかった費用のことです。
[*3] 譲渡所得の特別控除の額は、その年の長期の譲渡益と短期の譲渡益の合計額に対して50万円です。その年に短期と長期の譲渡益があるときは、先に短期の譲渡益から特別控除の50万円を差し引きます。
なお、譲渡益の合計額が50万円以下のときは、その金額までしか控除できません。

高級スポーツカーは?

個人が保有する高級スポーツカーは、通常、生活に通常必要な動産[*1]には該当しませんので、譲渡益が生じた場合には、課税関係が発生します。高級スポーツカーは値段が落ちにくいため、購入価額以上ので売れることもあると思いますが、使用又は期間の経過により減価する資産に該当しないため[*2]、法定耐用年数の1.5倍の償却期間により計算した償却費相当額を取得費から控除して譲渡所得を計算する必要があります。
この償却費相当額は家事費であるため、税金の計算上は何ら考慮されません。購入した金額と同額で売却したとしても、償却費相当額の売却益が発生してしまいます。
通常の感覚からすれば納得がいかない課税であると思われますが、新聞報道等によれば、高級スポーツカーの売却益をターゲットとした税務調査が行われ、所得隠しや申告漏れを指摘されていたケースがあるようです。

[*1]生活に通常必要な動産か否か争われた事例としてサラリーマンマイカー税金訴訟があります。この判例は、自動車事故によりマイカーを売却した際に発生した譲渡損を、給与所得と損益通算して申告したところ、損益通算は認められないものとして国税当局と争いになった事例です。
結論としては、損益通算が認められませんでしたが、第一審判決と第二審判決(最高裁判決は第二審判決を支持。)では判断が異なっています。 第一審判決は「生活に通常必要な動産」であると認定し、譲渡損はなかったものとされると判示しました。第二審は「自動車が生活に通常必要なものとしてその用に供されたと見られるのは、通勤のため自宅から自宅の最寄り駅までの間において使用した場合のみであり、それは本件自動車の使用全体のうら僅かな割合を占めるにすぎない」と認定し「生活に通常必要な動産」 には該当しないと第一審判決と異なる事実認定をしたうえで「生活に通常必要のない資産」の損失に該当するため、損益通算は認められないと判示しました。
[*2]生産台数が限定されたフェラーリが「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当するか否か争われた事例があります(令和2年3月10日付東裁(所)令元第84号)。この裁決では「生産台数が限定されていたとしても、台数が歴史的価値や希少価値を有して代替性のないものであるとまではいえないこと」や「道路連送車両法上の登録をされ、自動車登録番号標を表示して公道を走行していたことからすれば、これらが車両として使用する目的で購入されたことが認められる」ことから、時の経過によりその価値の減少しないものに該当するとはいえないと判示しています。

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